top of page

Extra

ミュートの栞.png

まもなく、七つ星の物語「ミュート」の章が始まります。

皆様ご着席の上、ご鑑賞くださいませ。

プログラムの最初に弾幕の練習があります。

良ければ、概要欄や固定コメントの弾幕を、コピーしてお待ちください。

それでは、まもなく開演です。

 

【台本】

🎶1曲目:サーカスナイト / 青葉市子

やあ、星の国の教会へようこそ。

僕はここで働いている聖歌隊のひとり。うん、そう。歌を歌う人。

 

あはは……あまりにも人が来なさ過ぎて、何でおもてなしをすればいいのかわからないんだ。

え”っ……歌ってみて?

たしかに……聖歌隊にできる最大限のおもてなしって、やっぱり……歌、だよね?

 

それじゃあ今夜は、とある教会で聖歌隊として暮らしていた、“ミュート”という少年の物語を聞いていかない?

彼が見てきた景色を、曲にのせて辿ってみようか。

 

その方が、聖歌隊らしいでしょう? ふふ、よーしきまり!

さぁ、ここからは気分を入れ替えて……不思議な話で、とても信じられないと思うんだけど……聞いてくれる?

 

 

 

ねえ、きみは――
“色”が、見えたことってある?

ぼくにはね、見えるんだ。
ほんとうのことと、うそが、色になって。

でも、それを教えてくれたのは――あの人だった。

 

あの日僕は、花畑の中でその人に出会った。
やわらかい風と光の中で、その人は歌っていたんだ。

知らない歌。
でも、なぜか懐かしくて――
胸の奥が、少しだけ痛くなるような歌。

「ねえ、きみも見えるの?」

その人は、ぼくを見て、そう言った。

「ほんとうの色と、うそつきの色」

僕はうなずいた。

すると、その人は少しだけ笑って――

「じゃあね、きっとわかるよ」

そう言ったんだ。

「美しいものは、壊してはいけないの」

 

ぼくは、教会で暮らしていた。

そこにはひとつだけ、とても厳しい決まりがあった。

“罪を見つけたら、必ず報告すること”

もし、それを破れば重い罰が与えられる。

だから僕は、いつも色を見ていた。

だれがうそをついているのか。
なにが間違っているのか。

ちゃんと、見逃さないように。

……あの日までは。

 

夜だった。

しんと静まり返った教会の中で、
ぼくは、見てしまったんだ。

見てはいけないものを。

 

ふたりの人が、いた。
互いに、強く抱きしめあって。離れないように、壊れないように。
そのまま、静かに――終わろうとしていた。

それがどんな意味を持つのか、僕にはすぐにわかった。
これは許されないことだって。

だから僕は、報告しなきゃいけなかった。

 

でも。

見えてしまったんだ、あのふたりの色が。

どこまでも透き通っていて、うそがひとつもない。
真珠のように甘く清らかな白が、二人を包んでいた。

……こんなにも、静かで。こんなにも、やさしい色。

それはまるで、あの花畑で聞いた歌みたいで。

胸の奥が、また少しだけ痛くなった。

 

🎶2曲目:Starduster / ジミーサムP

 

言わなきゃいけない。これは、罪だから。

でも一体、神様って誰なんだろう。
この二人を壊してまで、捧げなければいけない相手なのだろうか。

そんな罰当たりなことを、僕は思っていた。

 

彼女の言葉を反芻する。

「美しいものは、壊してはいけない」

それはどんな聖書の言葉よりも深く、僕の心を差していた。

『知っていることを言いなさい』

審問官の声が耳を突き刺すたびに、僕の胸で、彼女の言葉が光っていた。

 

そして僕は、なにも言わなかった。

ぼくは神様じゃなくて、あの二人を選んでしまった。 

ぼくは、なんて罪深いことをしたのだろう……。

やっぱり。ぼくは、間違っていたのかな。

 

教会の教えが『壊せ』と叫んでいる。

でも、ぼくの心は『守れ』と震えている。

……神様。ぼくは、どうすればよかったの?

 

ぼくはなにも言わなかった。 それでも結局、あの二人も星座になった。

正義を裏切り、神様を裏切り……ぼくはあの色を選んだんだ。 

沈黙を選んだあの日から、僕はこうして空の上で歌っている。

あの二人は今、どこか別の空で、並んで輝いているのかな。

 

一人に空は……広すぎる。

 

🎶3曲目:光るとき / 羊文学

 

僕は……たとえ罰を受けても、あの光景を美しいと思った、自分の心を信じたい。

あの嘘のない、真珠みたいな色を。 

 

……もう二度と会えないけれど。

あの光だけは、今もずっと、僕の中で生きているよ。 

 

(君にも、そんな風に……心の中でずっと光り続けている、大切な人はいる?)

 

聴いてくれてありがとう。

……え?寂しそう?僕が?……ふふ、バレちゃったか。

……うん。本当はね、寂しくて、怖いんだ。今までもこれからも、ここでずっと独り。

後悔を重ねたら、いつか僕も濁ってしまうんじゃないかって。 

 

でも、不思議だね。

こうして君と話して、僕の歌を聴いてもらっている間だけは……僕の心は、あの真珠の色をしたままなんだ。

僕を濁らせないでいてくれて、ありがとう。

僕はまだ、過去を信じられそうだ。

 

きみの旅はまだ続くんだよね。

あの真珠のような色を、きみにも、これからの旅路で見つけてほしい。

最後にもう一曲だけ、きみのこれからを祝して、この歌を。

……これからの未来は、どんな色に輝くんだろう。真実の光あらんことを。  

 

 

 

🎶4曲目:Starry Heavens / Day after tomorrow

 

「本当のことを言いなさい」

二人を告発していなかったら、僕はきっと星にはならなかっただろう。
でも、あの時自分の心に嘘をついていたら、今の自分を誇れなかった。
今なら、そう思えるよ。

 

夢を追う君と見守る僕に

同じ星の光が降り注ぐ

振り返らずに歩いて欲しいと

涙こらえて見送った

 

夜空を翔る流れ星を今

見つけられたら 何を祈るだろう?

旅立つ君と交わした約束

心の中にいつもある

 

やっぱり、僕は間違っていなかった。
だって、今同じことが起きたって、きっと僕は同じ結末を選ぶ。

君の眼には、僕の心は、どう何色に映っているだろう。
そして君がもし同じものを見ていたら、どんな結末を選んだのかな。

僕はすべての選択を、これから起こる運命を、とても愛おしく思う。
ひとつひとつ、歩んでいくすべてを愛せるように――僕たちには過去があるんだ。

そうだよね、お姉ちゃん。

©2026 七つ星の物語リレー

bottom of page