
Extra

—-
お~!
今日は随分たくさんのお客さんがいるねえ!
ようこそ、プラネタリウムへ!
皆は星は好き?
少なくとも、ここに来てくれてるって事は、ちょっとは興味があるって思ってもいいのかな?
じゃあ、今日はぼくのとっておきのお話を紹介しよう!
皆は、星が願いを叶えてくれるとしたら、どんなお願いをする?
(コメントを少々拾いながら)
これは「星に願ったある少年の話」
—-
ある国の外れの、小さな小さな田舎町に、ひとりの少年が住んでいました。
少年の名前は、テリオス。
漁で家を空けがちな父親と妹と三人で、海辺の小さな小屋に暮らしていました。
彼の日課は、星を見ること。
それは、亡くなった母親と幼い頃から続けていた大切な時間でした。
浜辺に腰を下ろし、今にも降ってきそうな満天の星を見上げる。
母親はそのひとつひとつに、物語を聞かせてくれました。
いまはひとりになっても、星空を見上げれば、優しい声が聞こえてくる気がして――
テリオスは毎晩、浜辺へ足を運んでいました。
ある日のこと。
いつものように星を眺めていると、後ろから小さな足音が近づいてきました。
「おにいちゃん…?」
眠そうに目をこすりながら妹が歩いてきます。
「…どうした?目、覚めちゃった?」
「うん…こわいゆめみたの…」
「そっかあ…じゃあ、お兄ちゃんと一緒に星、見てみる?」
「ほし…?」
「ほら、お空にいーーーぱいキラキラしてるでしょ?」
「…うん!すごーーい!!」
「いつもは寝てる時間だからちゃんと見たのは初めてか…」
「すごいだろ??」
「うん!」
「お星さまはね、キラキラできれいなだけじゃないんだぞ~?」
「え~?なにがあるの??」
「お星さまには、それぞれお話があるんだ!」
「おはなし…そうなの??どんなの?あれは?」
「あれはむか~~しの戦士さんなんだよ!すんご~~く強くて大きな怪物を剣で倒したんだって!」
「ほら、あの星と、その横の星とあっちの星を結ぶと、大きな剣に見えるでしょ?」
「ほんとだ!すご~~い!」
「あれは~~??」
「あれはねえ…」
こうしてテリオスは、母親から聞いた星の話を妹に語りました。
「さあ、そろそろ寝ないと…」
「え~もっと聞きたい~!」
「じゃあ、次が今日の最後お話!続きはまた明日、ね?」
「はーい!」
「それじゃあ、今日の最後は、あのいちばん大きなお星さまの不思議なおはなしをしようか…」
-
月のワルツ -約4分50秒
それからというもの、テリオスの星を見る時間は、妹とふたりの大切な日課になりました。
「今日はどの星のお話をしようか…」
「あ、あのね!おにいちゃん知ってる??お星さまって、おねがい、かなえてくれるんだって!!」
「お願い…??」
「うん!!あのね、おほしさまにかなえてほしいことをお願いしたら、かなえてくれるんだって!おばさんがおしえてくれたの!」
「そっか~~、確かに聞いたことあるような…」
おばさんとは、テリオスが家の仕事や父の手伝いをしている間、妹の面倒を見てくれるご近所さんのことでした。
「あのね、おほしさまにお願いしたら、おかあさんに、あえるかなあ…」
「お母さんに…?」
テリオスは言葉に詰まりました。
妹が母のことを口にしたのは初めてだったからです。
「…そう、だね!お星さまなら、叶えてくれるかも!」
「ほんと!?じゃあきょうからまいにちお願いしよ~!」
「うん、そうだね」
「あのね、おほしまのおうたもおしえてもらったの!」
「お歌?」
「うん!おほしまが、おねがい、かなえてくれるんだよ~っておうた!」
「どんなの?きかせてみてよ!」
「うん!」
-
星に願いを - 2分20秒
――妹の願いが、頭から離れませんでした。
『おかあさんに、あえるかなあ…』
テリオスは、母の言葉を思い出します。
「ねえ、テリオス。お星さまはね、お願いを叶えてくれるんだよ」
「お願いを…?なんでも?」
「そう!なんでも!」
「うそだ~!」
「嘘じゃないわよ~!ほら見てて、今から母さんがお星さま、流れろ~ってお願いするから!」
「え~!ほんと??」
「えい!」
母が指を向けると、いくつもの流れ星が走りました。
「ほら、ね!」
「わ~~!でも、ぐうぜんじゃないの~?」
「お星さまは、お願い、叶えてくれるんだよ」
あれは偶然だったのか。
それとも――。
「本当、なのかも…」
そう思ったとき、テリオスは動き出していました。
それから彼は、願いを叶える星について調べ始めます。
街の小さな図書館に通い、あらゆる本を読みあさりました。
年月が過ぎる頃には、
「願いを叶える星は、きっと存在する」
そう確信するようになっていました。
しかし――決定的な手がかりは見つかりません。
「でもなあ…ありそうなんだけど…」
そんなある日。
図書館へ向かう途中、強い風が吹きつけました。
「わッ!?」
抱えていた本が草むらへ飛ばされます。
必死に探し、すべて見つけたその時――
ふと顔を上げると、見知らぬ小屋がありました。
「こんな所に建物なんてあったんだ…」
それは草木に隠れるように建つ、小さな小屋でした。
迷いながらも扉を開けると、そこはどうやら本屋のようで、
中には見たことのない本がぎっしりと並んでいます。
テリオスは好奇心の赴くままに手あたり次第本をめくります。
時間も忘れて文字の波間を漂っていると、ひときわ重厚な一冊が目に留まりました。
引き寄せられるように手に取り、パラパラと開いてみると、目次の「星」という文字が目に飛び込んできます。
「星…!」
「これ!もしかして…!」
そこには――
「願いを叶えてくれる星」の記述があったのです。
その時。
「その本に興味があるんですか?」
どこからともなく声が響きました。
「えっと…はい…」
「ふーん……それなら、あげます。その本」
「え…?」
姿は見えないままでしたが、 どうやらその声の主はこの書店の店主のようで、全く予想のしていなかった言葉が返ってきました。
「いいんですか…?ぼく、お金も持ってないですよ?」
「もちろんです!読みたい方の手に渡ったほうが、本も嬉しいと思います」
「あ、ありがとうございます!」
「……大事なお願い事、叶うといいですね」
その言葉を背に、
テリオスは本を抱え、走り出しました。
――願いを叶える星を、見つけるために。
-
海の幽霊 - 約4分
→MVのような感じで「願いを叶える方法」にたどり着き、その方法を実行し、
母親が戻ってくる所を曲の中で表す。
・戻ってきた!という所までは描くがその後は描かない。
・実際戻ってきたのは母親のできそこない。動きも喋りもしない空っぽの母親
・亡くなった人を生き返らせるという禁忌を犯し自分も星にされてしまう
・願いが叶ったことですべてを失ってしまった
—-
めでたしめでたし
少年は無事、星に願いを叶えてもらいましたとさ!
どう?興味深い話でしょう?
改めて皆は星に何をお願いする?
その願いがあなたを幸せに導きますように。
その願いで身を滅ぼしませんように。
(本を閉じる音)
おっと、そろそろ交代の時間かな!
まだまだ沢山の星が皆を待っているからね!
それでは、素敵な星の旅を…
—-
■裏話
・魔法の存在が「あ~、あるらしいよね。俺達には関係ない世界の話だけど!」くらいの認識レベルの田舎町
・母はもともと魔法の才があった(流れ星が流れたように見えたのは実は魔法)
・母の才をめぐるいざこざに嫌気がさして、魔法の存在がほぼ知られていない辺鄙な町に逃げてきた
・「星に願いを叶えてもらう」のは魔術の類
・テリオスが見つけた小屋は禁書庫で、見つけた本は禁術書
・魔法の存在がほぼおとぎ話レベルの田舎町だからそんな魔術本があっても問題になっていなかった
・少年は奇しくも魔法の才が遺伝していたため禁忌を犯すことになってしまった
