
Extra

小鳥のさえずり、窓から射し込む朝日。
あなたはまだ夢見心地な身体をゆっくりと起こす。
今日は休日だ。いつもより2時間近く多く寝たおかげで、目覚めは悪くない。
朝食を用意し、ニュースを見る。
いつもと変わらない朝のルーティン。
朝食を食べ終わったあなたはいつも通りポストへと向かう。
中には……何かある。
取り出してみると、それは見慣れない封筒だった。
鍵柄のシーリングスタンプで綴じられていた。
妙に丁寧な作りだったので、あなたは怪しみつつも中身が気になって開けてみた。
そこには、1枚の紙が入っていた。
「厳正なる抽選の結果、当選!」
「あなたは選ばれたのです!」
「世界に一つだけのプラネタリウムにご招待!」
「これを逃すと一生後悔するかも……」
「星好きはスルー厳禁!」
「あなたがこのプラネタリウムを見るべき10の理由」
……
目を覆いたくなる怪しすぎる文句にセンスの無さすぎるデザイン。
開けたのは間違いだったかと思いかけたが、しかしあなたの目を引く一文があった。
「世界に一つだけのプラネタリウム」
……あなたは星や宇宙が好きである。
専門的というほどでもないが、たまにくる珍しい天体ショーを見ることは、あなたの趣味の一つであった。
プラネタリウム……それも世界に一つだけ。
気になったあなたは、少し怪しみながらも、紙に書かれている地図の示す場所へ行くことにした。
地図は町外れの雑木林の中を示していた。
どうやらその場所にただ行くだけでなく、独特の手順を踏まないといけないらしい。
ここの木で止まって、3.5歩足踏みして、右へ70°曲がって、14秒歩いた後に地面を3回ノックして、振り返る…
すると、目の前の景色は一変した。
#
ここは……?さっきまで雑木林にいたのに……
#
住宅街の通り……のようだが、道は途中で消えているし、建物が続いている様子もない。
唯一……目の前には大きな屋敷があった。
ここが「世界に一つだけのプラネタリウム」だろうか。
プラネタリウムというから、科学館みたいな出で立ちを想像していたが、なんだか普通の家のようだ。
扉……勝手に開けてもいいものか。
インターホンとかは……生い茂った草に隠れて見えない。
どうしよう……最悪、大声を出して……
そこまで考えた時、扉が開いて、中から人が出てきた。
#???
あぁ!こんにちは!もしかして僕の招待状を見て来てくれた人かな?
#
招待状。確かにそれを見てここに来たが、”僕の”招待状と言ったか?
この一見知的そうな人が、あの怪しすぎる招待状を?
……という考えを奥に押し込めるように、無難に返事をする。
が、少し表情に歪みが出ていただろうか。その様子を曲解されたようで……
#???
その顔は、さてはあの招待状のデザインに感動した顔だね!?
いやぁ、分かってくれて嬉しいよ!何しろこだわりにこだわって、5時間もかけて作ったんだから!
#
こだわってあれか……到底同じ星に住む人間とは思えないセンスだ。
愛想笑いしてごまかす。
話す様子を見る限り、愛想は良い人のようだ。
#???
あ、そういえば名乗っていなかったね。
僕は……そうだな、プラネと呼んでくれ。
#プラネ
プラネタリウムだからプラネ。分かりやすいだろう?
どうぞ、中に入ってよ。歩きながら話そう。
#
そう言うプラネの後について、中に入る。
#
廊下には写真……いや、リアルな絵画だろうか。
ファンタジー作品に出てきそうな色んな風景が飾ってある。
草原と星空、花畑、教会、本屋……
建物や周りの景色から、どこか違う世界の情景であるような印象を受ける。
それから、小さな机に花瓶が置いてある。
何の花だろう。自分の知識の中には無さそうだ。
#プラネ
はい、これあげる。パンフレット。
これも僕が作ったんだよ。
#
受け取って表紙を見ると、そこにはありとあらゆる極彩色の文字が……
目が痛くなりそうなので、一旦見ないことにした。
#
あなたはプラネに奥の部屋へと招待された。
中に入って見上げると、そこには大きなドーム状の天井があった。
一面暗く、既に星空が映し出されている。
#プラネ
このプラネタリウムはね、作成途中なんだ。
映し出されるのは君たちのよく知ってる星空ではなく……とある別の世界の星空なんだ。
#
なるほど。だから、世界に一つだけのプラネタリウム……
#プラネ
それからね、もう一つ特別なことがあるんだ。
#
プラネはもったいつけて、一呼吸置いてから切り出す。
#プラネ
それは、ここに映し出される星には”語り部”がついているということ。
#
語り部……?
#プラネ
ふふ、びっくりしたかな?
君たちのよく知る星にも、神話というものがあるだろう?
それと同じように、このプラネタリウムの星にも、それぞれにまつわる物語があるんだ。
語り部達がその物語を語ってくれるから、君に聞いてほしい。
そして、その物語の"真実"を知ってほしい。
星それぞれの物語がひとつなぎになった、星座の物語を。
世界に一つだけの星座を、君に結んでほしいんだ。
#
星座の物語を結ぶ……
あなたはその言葉に心踊った。
架空の星を映し出すプラネタリウム……休みの日の娯楽としては、なかなか良いのではないだろうか。
あなたはプラネに快諾の返事をした。
#プラネ
ありがとう!本当に助かるよ。
……本当に、ね。
さ、こっちに座って。開演するから。
#
椅子に座って天井を見上げる。
座り心地が良い。思わず寝てしまいそうだ。
ほどなくして照明は暗くなり、スピーカーからプラネの声が聞こえた。
#プラネ
本日は当プラネタリウムにようこそお越しくださいました。
これからお客様を、星の物語を巡る旅『七つ星の物語リレー』へとご案内いたします。
その前に、いくつか注意事項をお伝えします。
この空間では、皆様に星々の声を静かに感じていただくため、上映中のお話し声やスマートフォンのご使用はご遠慮ください。
また、座席の移動や立ち上がりも、安全のためお控えいただきますようお願いいたします。
#
うん、よくあるプラネタリウムの注意事項事項だ。
#プラネ
また当上映は、”概要欄”に貼っている”再生リスト”からご覧いただくとスムーズに”枠移動”が可能でございます。
#
……ん?再生リスト?枠移動?
#プラネ
それからXでの感想の共有はぜひ、“ハッシュタグ”「#七つ星の物語リレー」でお願いいたします。
#
ハッシュタグ??
#プラネ
演者は皆、”スパチャ”は無しに設定しています。
”メンギフ”は可能となりますので、投げ銭での応援の際はそちらをご活用ください。
#
な、何だかあまり聞き慣れない言葉が飛び交っている……
ローカルルールかな?プラネタリウムに?
#プラネ
あ、こちらの話ですので、お気になさらないでください。
#
心を読まれている!?
#プラネ
それではこれより、『七つ星の物語リレー』を彩る星たちの紹介をさせていただきます。
夜空の旅へ、出発しましょう。
──皆さま、当プラネタリウムにお越しいただきありがとうございます。
今宵は7つの星々が語る物語の世界へ、皆さまをご招待いたします。
私(わたくし)からは、星だけではなく、その星にまつわる物語を語る「語り部」についてもご紹介させていただきます。
それでは、星々の瞬きが織りなす音色に身を任せて、夜空を見上げてみましょう。
南西方向、少し高い位置を見てみますと、強い輝きを持つ星が4つ見つかります。
まずは一番高いミントグリーンの星に注目しましょう。
この星はテリオス。物語の語り部は明澄祈。
いつも元気で食べることが大好きな中性VTuber。冬の空気のように澄んだ歌声と星空のような明るい響き、そして熱いクリエイター魂を併せ持っています。
続いてテリオスの右下にある黒い輝き。こちらはファベロ。語り部はりくり。
この世の全てを眠らせるために歌うVSinger。柔らかく安らぎに満ちた歌声が、伸びやかなメロディを紡ぎます。
そこから下の方へ目を移すと、真紅に燃える光が見えます。
この星はトカール。語り部は古椿姫メル。
花を愛する『古椿の霊』という妖怪。
感情をありったけに込めた表現で、真っ直ぐな愛を歌い、物語の世界へと引き込みます。
その左上では、トカールと対照的に、静かに輝く水色の星が見えますね。
これはアレイシアです。語り部は或夢。
あなたとわたしの境界で、夢を紡ぐシームレスアーティスト。
穏やかな光の中に大きな熱をたたえた、青い炎のような歌声が、音楽に寄り添った繊細な表現に載って届けられます。
それでは少し離れて、東側へと向かいましょう。皆さんのよく知る星空には「夏の大三角」「冬の大三角」といったものがありますが、それらと似たように並ぶ3つの星がありますね。
一番高い星から見ていきましょう。
純粋な真っ白の輝きを持つこの星は、ミュート。語り部は星乃かなた。
儚いインキュバスのおとこのこVTuber。
柔らかく優しい綿のような声で、心に寄り添う癒しの時間を。儚くも確かな光で包みます。
そこから右下へ辿ると、海のように青い星、イテルが見えます。語り部は歌踊マガル。
高らかに歌い上げるミュージカル俳優系VTuber。青空を突き抜けるような歌声から、優しく語りかけるような表現まで。音楽に寄り添って物語を届けます。
最後は一番東側に見える、青色からクリーム色への美しいグラデーションを見せる星、マーリャ。語り部は夢境めいろ。
キミを夢へと誘う、夢の案内狐。
柔らかい中に落ち着いた響きがあるメロウな歌声で、そっと手を引くように先を導いてくれることでしょう。
以上、7つの星の物語を辿っていく旅「七つ星の物語リレー」を、どうぞ心ゆくまでお楽しみください。
